狩野研究室

Vision/About Us

研究テーマ紹介

狩野研究室は、生成AIのように日本語や英語など自然言語をコンピュータで扱う「自然言語処理」の研究をしています。言語は人間の知能の中核であり、人間の知能を探求する科学的な側面と、人間と協調する知的システムを作るという工学的な応用が表裏になる挑戦的な分野です。
このページは、大学生・高校生・一般の方向けです。研究者・企業の方、研究のより詳細を知りたい方は狩野准教授のページをご覧ください。


どんな研究?

誤解を恐れずに一言でいえば、人間の知能の仕組みを取り入れて、生成AIを使い・作り・超える。その成果を政治・医療・法・実験科学などさまざまな分野で実用化するのが目標です。

研究アプローチの概念図

人間の知能の仕組みを取り入れて、生成AIを使い・作り・超える

より人間に近い言語処理

近年、超大規模データの機械学習によるLLM(大規模言語モデル)やそれを用いた生成AIが成果を上げていますが、人間の仕組みからは離れたモデルになり必要なデータ量が多すぎること、 ブラックボックスで説明が困難であるなどの課題があります。 脳科学・認知科学的により人間に近い言語モデルの構築により、これらの点を打破することが長期的な目標です。

言葉を隅々まで理解させる

言葉を理解するとき、読み飛ばしたり聞き逃したりすると意味が分からなくなってしまいますし、省略された内容を補う必要もあります。 特にX(旧Twitter)に代表されるSNS(ソーシャルネットワークサービス)の書き込みは、省略や不完全な文が多く話し言葉に近い処理の難しいテキストです。省略の補完などを行いすみずみまで理解できるようにし、LLMと統合してすべての処理の基盤とします。

論理的な推測:含意・矛盾・中立の判定

二つの文章の関係が、含意・矛盾・中立のいずれであるか判定することは、論理的な推論の基礎となります。以前取り組んでいたロボットは東大に入れるか(東ロボ)プロジェクトでの大学入学試験社会科の自動解答、さらに現在も取り組んでいる我が国司法試験の自動解答は、そうした判定そのものといえます。また、二つの意見が同じなのかどうかを判定し、人々の意見をグループ化したり流れを追うことを目指しています。

人物特性の分析と再現、気持ちの推測

さまざまな個人の特性、オンライン上の意見や行動を表すデータセットを構築しています。これにより、典型的な人物タイプと行動の推測、さらに特定の人物の振る舞いの再現を試みています。また、東京大学と共同で構築した状況別極性単語辞書などを用いて、人々の感情すなわち「気持ち」の推測に取り組んでいます。

文章と対話の自動生成:人狼知能、事物や人間関係の一貫性

生成AIの登場により文章生成の性能は飛躍的に向上しましたが、事物や人間関係の一貫性など長い文章の生成はまだ未知数のところがあります。また、人間の言語処理は話し言葉を基盤としており、その処理に必要な要素は言語処理と音声処理の統合、相槌の生成やターンテイクなど多岐にわたります。さらに、比喩(メタファー)など重層的な意味をもつものの理解・生成を目指します。

人狼知能プロジェクト

また、嘘をつき嘘を見破る会話ゲーム「人狼」をプレイする人工知能を作成する人狼知能プロジェクトのメンバーとして自動対戦を行う自然言語部門を毎年開催しており、今のLLMに不足する点を明らかにし改善を試みています。
人狼知能プロジェクトのウェブサイト
【JSAI2024】LLM活用によって新次元に突入した人狼知能研究の可能性と限界 モリカトロン

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政治・医療・法・実験科学での実用化

政治:欺瞞とその広がりの検出、世論形成過程と社会集団的精神状態のシミュレーション

人々の意見や気持ち、世論や社会集団的な精神状態とその変化をシミュレートします。大規模なSNS投稿データ、国会議事録、メディア記事などを用いて、個人属性や状態とSNSで受け取る情報に応じた個々人の情報拡散やいいねなどのSNSリアクション・意見や気持ちの変化を予測します。また、いわゆるフェイクニュースなど欺瞞の検出と、その拡散「バズり」の予測を試みます。

医療:精神疾患の自動診断、大規模電子カルテを用いたがん治療の個人最適化

心理士と患者(うつ病・認知症・統合失調症・不安症・健常者)の会話録音を、一千時間超の世界最大規模の診断付きコーパスを構築しています。新たに客観的な基準を提供すること、さらにSNS等テキストとの紐づけでテキストからも「病気以前の未病」の検出を目標として、ソーシャルメディアのデータも用い、疾患の自動診断支援を試みています。発達障害についてもその自動スコアリングを行いました。LLMを用いたAIセラピストの作成にも取り組んでいます。慶應義塾大学病院、東京大学、国立情報学研究所、東京医科歯科大学、国立精神・神経医療研究所などと共同研究を行っています。 Newton AI ドクターが命を救う 人工知能は医療をどう変えるか?

電子カルテ(診療録)や病理所見の処理など、医療テキストの処理を行っており、目標の一つは、医療現場を助けることのできる診断支援システムの構築です。国立病院機構の収集する大規模な電子カルテデータセットを用いて、患者の家族歴・既往歴・検査結果・所見から、どの抗がん剤が効果があり副作用が少ないかの推測を試みています。国立病院機構、浜松医科大学、日本病理学会などと共同研究を行っています。

法律文書の処理と司法試験の自動解答

法律関連の文書は文が長く複雑なうえ、背後に人間関係や論理構造が仮定されており高度な言語処理を必要とする分野です。
そうした法律文書の処理技術のベンチマークとして、国際コンペティションCOLIEEを毎年開催し、我が国の司法試験自動解答に挑戦しています。さらに、裁判過程の自動化支援を目標に取り組んでいます。
AIで裁判過程分析 静岡大、情報学研などと共同研究. 日本経済新聞

実験科学:学術論文に基づく発見の自動化・仮想実験

世界には日々膨大な量の論文が公開されており、人間ではおいきれませんが、自然言語処理によって自動的に必要な情報を抽出します。生成AIによりテキスト部分の処理能力は大幅に向上しましたが、図表の扱い、特に数値の解釈と統合、不正確な演算やハルシネーション(幻覚、間違った内容の出力)の発生抑止は未解決の課題です。

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研究メンバー募集中

人間のことばや会話、人工知能、生成AIに興味がある方、まだ誰もやったことがないことに一緒に挑戦しましょう!

研究室配属希望の学部生のみなさんへ

研究室配属は主に行動情報学科の学生になりますが、情報科学科および情報社会学科からは先端情報学実習の履修者を対象に受け入れています。 研究内容や教員の人柄を知るために、狩野が担当する2年前期「AIシステムⅠ」(2024年度までは「知的情報システム開発Ⅰ」)の聴講を、初めの数回だけでもお勧めします。 また、志望を決める前に一度私と直接お話されることをお勧めします。少なくとも一年以上一緒にやっていくことになりますので、希望する内容の研究ができそうか、教員と相性が合うかを確認しておくとよいと思います。 大学院への進学志望も大歓迎です。

受験する高校生の皆さんへ

狩野研究室で卒業研究(研究室配属)をしたい場合は、「静岡大学 情報学部 行動情報学科」を受験してください。研究室配属は行動情報学科の学生が主になります。

Member


狩野 芳伸
狩野 芳伸
  • Research Subject : 自然言語処理、対話システム、テキストマイニング、人工知能
  • Hobby : 旅行、美味しいもの、研究?
  • Private Link : 狩野准教授のページ
雨宮 正弥
雨宮 正弥
  • Grade : M2
  • Hobby : ゲーム、ボウリング
宇野 成美
宇野 成美
  • Grade : M2
  • Hobby : 創作
翁長 駿光
翁長 駿光
  • Grade : M2
  • Hobby : ゲーム
田中 宏和
田中 宏和
  • Grade : M2
  • Research Subject : 精神疾患の自動診断
  • Hobby : ゲーム、キャンプ、釣り
中路 侑里
中路 侑里
  • Grade : M2
  • Hobby : 漫画、音楽、犬
増川 哲太
増川 哲太
  • Grade : M2
  • Hobby : 美味しいもの、音楽、ダンス
村松 俊平
村松 俊平
  • Grade : M2
  • Hobby : 音楽、漫画、ドライブ
香月 祥
香月 祥
  • Grade : M1
  • Hobby : コスプレ、サッカー観戦
坂根 亜美
坂根 亜美
  • Grade : M1
  • Hobby : 読書
坪田 侑華
坪田 侑華
  • Grade : M1
  • Hobby : 音楽、犬
仲田 明良
仲田 明良
  • Grade : M1
  • Hobby : ラーメン
山西 智恵
山西 智恵
  • Grade : M1
  • Hobby : 音楽鑑賞
渡邉 嶺王
渡邉 嶺王
  • Grade : M1
  • Hobby : youtube観賞、ゲーム
荒沢 康平
荒沢 康平
  • Grade : B4
  • Research Subject : 含意関係認識、ファクトチェック
  • Hobby : 野球観戦
鏡沼 海渡
鏡沼 海渡
  • Grade : B4
  • Hobby : ボードゲーム、リアル脱出ゲーム、サウナ
佐橋 優人
佐橋 優人
  • Grade : B4
  • Research Subject : 世論分析
  • Hobby : 漫画
馬場 海好
馬場 海好
  • Grade : B4
  • Research Subject : 解釈可能な言語モデル開発
  • Hobby : 釣り、サウナ、ドローンレース
福畠 汐音
福畠 汐音
  • Grade : B4
  • Research Subject : 世論分析
  • Hobby : ゲーム、映画
宇佐美 翔大
宇佐美 翔大
  • Grade : B3
  • Research Subject : 論理法律
  • Hobby : 旅行、サッカー観戦
神谷 知里
神谷 知里
  • Grade : B3
  • Research Subject : 電子カルテ
  • Hobby : 茶道、ゲーム
河口 欣仁
河口 欣仁
  • Grade : B3
  • Research Subject : 教育応用
  • Hobby : プログラミング
下田 祐樹
下田 祐樹
  • Grade : B3
  • Hobby : 音楽、ゲーム
恒川 涛
恒川 涛
  • Grade : B3
  • Hobby : バドミントン
山口 真
山口 真
  • Grade : B3
  • Research Subject : Knowledge Graph、平易化
  • Hobby : 少年マンガ

It's your turn!

卒業生はこちら

卒業生の主な就職先は以下の通りです。
アクセンチュア株式会社, 株式会社NTTドコモ, 株式会社オプト, 株式会社共同通信社, 株式会社サイバーエージェント, チームラボ株式会社, 株式会社トヨタシステムズ, スズキ株式会社, 日本アイ・ビー・エム(IBM), 日本電信電話株式会社(NTT), 富士ゼロックス株式会社, 富士通株式会社, ヤフー株式会社, 株式会社リクルート 等

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2024-09-24

狩野准教授主催のワークショップAIWolfDial2024が産総研臨海副都心センターにて、国際会議INLG2024(17th International Natural Language Generation Conference)にて開催されました!

発表した論文は以下のとおりです。

  • Yoshinobu Kano, Yuto Sahashi, Neo Watanabe, Kaito Kagaminuma, Claus Aranha, Daisuke Katagami, Kei Harada, Michimasa Inaba, Takeshi Ito, Hirotaka Osawa, Takashi Otsuki, Fujio Toriumi. AIWolfDial 2024: Summary of Natural Language Division of 6th International AIWolf Contest
  • (査読付き)Yuka Tsubota, Yoshinobu Kano. Text Generation Indistinguishable from Target Person by Prompting Few Examples Using LLM
  • (査読付き)Neo Watanabe, Yoshinobu Kano. Werewolf Game Agent by Generative AI Incorporating Logical Information Between Players

AIWolfDial2024のメインページはこちら
https://sites.google.com/view/aiwolfdial2024-inlg

発表された論文一覧はこちら
https://aclanthology.org/events/aiwolfdial-2024/

2024-02-28~03-01,04,05

仲田君(B4)がDEIM2024(第16回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム)で研究発表を行い、学生プレゼンテーション賞を受賞しました!

おめでとうございます!!

DEIM2024のメインページはこちら
https://confit.atlas.jp/guide/event/deim2024/top

DEIM2024の表彰者一覧は こちら

2024-05-28∼31

青木君(M2)と小澤さん(M2)、小川さん(M2)、香月君(B4)、渡邊君(B4)、坪田さん(B4)、坂根さん(B4)、馬場君(B3)が2024年度人工知能学会全国大会(第38回)で研究発表を 行いました!

発表した論文は以下のとおりです。

  • 青木 洋繁, 狩野芳伸. 日本語表現での嘘つき検出器構築と汎用性検証
  • 小澤 菜々美, 狩野 芳伸. キャラクターを設定したLLM対話生成におけるfine-tuneおよびfew shot promptの効果
  • 小川 麻美, 狩野 芳伸. 記号と分散表現の統合のための記憶に制約を課したRNNの次単語予測による事前学習
  • 坂根 亜美, 村松 俊平, 堀口 裕正, 狩野 芳伸. 異なる語彙とトークナイザを用いた言語モデルの事前学習と医療ドメインへの適応
  • 坪田 侑華, 狩野 芳伸. 10の発言例で構成するFew-Shot Promptingによる人格の再現
  • 渡邉 嶺王, 狩野 芳伸. プレイヤー間の論理的情報を与えた生成AIの対話による人狼ゲームエージェントの構築
  • 香月 祥, 中村 啓伸, 岸本 泰士郎, 狩野 芳伸. 精神疾患会話コーパスを用いた笑い自動検出器構築と疾患分類
  • 馬場 海好, 狩野 芳伸. 日本語事前学習済みBERTの言語学的機能による差分入力を用いたAttentionヘッド別機能分析

人工知能学会全国大会のメインページはこちら
https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2024/

2024-03-11∼15

藤田君(M2)と高須君(M2)、西村君(M2)、仲田君(B4)、林さん(B4)、荒沢君(B3)、福畠君(B3)がNLP2024で研究発表を 行いました!

発表した論文は以下のとおりです。狩野の共著論文も発表されました。

  • 西村稜真, 狩野芳伸. 日本語GPTの蒸留における損失関数の比較
  • 藤田真伎, 狩野芳伸. Chain-of-Thought過程の誘導によるLLMの性能改善と推論過程および性能の説明性向上
  • 高須遼, 狩野芳伸. JTweetRoBERTa: 大規模SNS投稿テキストによる事前学習と各種タスクによる性能検証
  • 仲田明良, 狩野芳伸. Style SimSCE: SNSユーザ同一性に基づく対照学習によるスタイル類似性を捉えた文ベクトルの獲得
  • 林小春, 狩野芳伸. 読解時の視線認識情報と音声発話コーパスを用いたポーズの予測とその比較
  • 荒沢康平, 狩野芳伸. 生成 AI は含意関係認識ができるのか
  • 福畠汐音, 仲田明良, 佐橋優人, 増川哲太, 三輪洋文, 野中尚人, 木下翔太郎, 岸本泰士郎, 五十嵐彰, 岡久太郎, 狩野芳伸. STaMP: 個人の性格や政治的立場等の多面的特性と紐づくSNS データの構築及び文章スタイルによる個人特性予測
  • 鈴木就斗, 狩野芳伸. 創造的な文生成タスクに対するLLMプロンプトの自動生成

NLP2024の大会メインページはこちら
https://www.anlp.jp/nlp2024/

2023-12-25

仲田君(B4)が国際会議NTCIR-17タスクで首位、Best Awardをダブル受賞しました!

仲田君(B4)が、国際会議NTCIR-17のQA Lab for Political Information-4 (“QA Lab-PoliInfo-4”) Stance Classification subtaskで首位の性能を達成しました。

またその発表において、Best Oral Presentation AwardとBest Poster Presentation Award を同時受賞しました。

おめでとうございます!!!

静岡大学情報学部のニュース

2023-12-12

狩野准教授がFRONTEO 経済安全保障勉強会で講演を行いました。

詳細はこちらをご覧ください。

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発表や業績の全リストは 狩野准教授のページ業績一覧略歴・社会活動・外部資金等をご覧ください。

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狩野准教授の連絡先は kano@inf.shizuoka.ac.jp です(全角@を半角@に変えてください)

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